カテゴリー「006長谷川辰蔵 」の記事

2007.10.20

養女のすすめ(7)

銕三郎(てつさぶろう 14歳 のちの平蔵宣以=小説の鬼平)の父・平蔵宣雄(のぶお 41歳 小十人組頭)が養女に迎えるといった女性と、その父・三木忠大夫忠任(ただとう 高崎藩士?)のことを考察している。

話は飛ぶが、平蔵宣以(のぶため)の継嗣・宣義(のぶのり 家督前の名=辰蔵)である。
その『寛政譜』を掲げる。この『寛政譜』のために「先祖書」を幕府に上呈したのが、家督した平蔵宣義であることは、再々、記した。

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(長谷川宣義(幼名=辰蔵)の譜)

宣義の母親が、宣以の正妻・久栄(ひさえ 大橋家からの嫁入り)であることは、冒頭に書かれている。
譜の末尾に、

 妻は永井亀次郎安清(やすきよ)が養女

とある。
いつだったか、永井亀次郎安清『寛政譜』をのぞいて、驚いたことがあった。

永井家は譜代で、祖は、高崎城を守る大浜の城主であった。徳川の水軍に近い存在らしかった。
家康が、命からがら伊賀越えて伊勢の白子(しらこ)から海を三河・大浜に向かったとき、船で出迎えたのが永井平右衛門重元(しげもと)であった。
伊賀越えの側近には、その嫡男・弥八郎直勝(なおかつ)がしたがっていたというから、因縁は深い。想像するに、白子から、弥八郎の従者が大浜へ急走でもしたのであろうか。

直勝は、その後、家康に重用され、淀城をまかされたりもしている。
『寛政譜』によると、永井一門は26家に増え、うち4家が大名。
もっとも、永井亀次郎安清は末の末、26家のどんじり近くに記されているが、それでも400石、両番の家格である。

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永井26家の家譜をまとめた最後の10枚目)

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永井亀次郎安清の譜---子どもたちのところの女子に、
 
 女子 実は橋場神明の神職・鈴木大領知庸が女、
     安清にやしなはれて、長谷川平蔵宣義に嫁す。

とある。
橋場神明は、現在の石浜神社(荒川区南千住3-28-27)である。社務所に確かめたら、明治前の神職は鈴木家であったと。宮司家が代わっているし、史料も焼失とのことで、それ以上は不明とのこと。

永井安清の父・三郎右衛門安静(やすちか)の譜の末尾をみてほしい。

 妻は松平大学頭家臣三木久大夫忠位(ただたか?)が女

三木家を媒介として、奇妙なところで、永井家長谷川家がつながった。
そして、謎は、いよいよ、深まった。

 

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2006.07.18

辰蔵の年賦

長谷川平蔵宣義(辰蔵)の年譜

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長谷川家紋[左藤巴]

明和7年(1770)生       (宣以25歳、宣雄52歳)

天明8年(1788)12月23日(19歳)お目見(宣以43歳)

寛政5年(1793)ごろ      結婚 (24歳)
                   石浜神社の神官の
                   永井亀次郎安清の養女

〃 6年(1794)         男子:宣茂が誕生
〃 7年(1795)4月  (26歳)宣以50歳。病に倒れる
〃        5月8日     書院番士に(廩米 300俵)
                   (松井松平支族)の
                   松平内匠頭康休組
〃 8年(1796)    (27歳)若君の小納戸

享和2年(1802)7月12日(33歳)西丸の小納戸

文政9年(1826)12月15日(57歳)西城の小納戸頭取、
                   山城守、従五位下
天保2年(1831)6月8日(62歳)先手8番手の弓組頭

天保7年(1836)歿    (67歳)

こうしてみると、父・宣以のおかげで父の生存中に書院番士に召された幸運は別として、あとの順当ともいえる昇進は、当人自身の精進の結果であろう。
火盗改メとして功績をあげた父・宣以が果たせなかった山城守、従五位下に、祖父・宣雄(備中守・従五位下)同様に叙爵されたのもなかなかのものといえる。
もっとも、その時は57歳、父・宣以は50歳で病歿しているから、いちがいに比較はできないが。
ま、史実の辰蔵は、小説に書かれているほど凡庸ではなかった。
いや、父・宣以の死による家督後、隠れていた資質を発揮したともいえる。

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2006.06.06

嫡子・辰蔵への助言

功なった父親から見た成人前の息子は、友人選びまでふくめて、やることなすこと頼りなく、これで一家を立てていけるようになるだろうかと不安でもある。いや、あなたの家のことではなく、長谷川平蔵と息子の辰蔵……。

まあ、辰蔵の描かれ方に、(成長小説の要素もそなえているな)と思ったこともしばしば。

史実の辰蔵は、処世は父親の平蔵よりはるかに上手だったかもしれない。父親はついに授かることのなかった従五位下・山城守も手にしているし、番方(武官)では最高に近い先手弓・8番手の組頭(1500石高)にも就いている。二つは祖父と同じだ。

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寛政10年、『寛政重修諸家譜』編纂のために、辰蔵(平蔵宣義)が
呈した「先祖書」の表紙。西丸御小納戸 長谷川平蔵と署名。
(国立公文書館蔵)

また賢明にも、出費の多い火盗改メを回避している。平蔵が足かけ8年も火盗改メをつづけて家産を傾けてしまっているから、幕府のほうで気の毒がって命じなかったともとれる。

寛政7年(1795)5月8日(平蔵の死の2日前)『続徳川実紀』に、
 「先手弓組、長谷川平蔵宣以の子・辰蔵宣義(のぶより)、父
 のお蔭もて両番となる」
とある。

呼びだしによって急きょ登城すると、書院番入りを命じられた。

もともと番入りする武官の家柄だし、御目見(おめみえ)は父の平蔵が手をまわして7年前に19歳ですませた。もっとも若年寄による御目見前の下見分は、武芸は辞退、素読講釈だけで受けてはいるが……。
「父のお蔭もて」はいいすぎではないかと勘ぐってみた。

思いあたったのは、平蔵は死の床にあるとはいえ、先手組頭と火盗改メを辞していない。親が在職中に番入りすれば家禄とは別に、当人に廩米300俵が給され、ダブル・インカムになること。

が、親の七光(?)もここまで。あとは自身の才覚で出世を考えないといけない。留意したのは、父が名火盗改メの世評をとる一方で、役人にあるまじき、やりすぎ、目立ちすぎ、前例軽視の型破りで同僚の幕臣たちからは総スカンにちかい扱いをされていたこと。

辰蔵は母に、祖父・宣雄の人となりをきいた。

「軽率なそこもとには七代さま(宣雄)の真似は、とても無理。
ですが人前で黙っていれば、すこしは七代さまに似るでしょう。
口が堅いとの評判をとれば、人は秘密を打ちあけてきます。
季節の挨拶、祝儀不祝儀などは書状に託してぬかりなく届け
ること」

効果は1年もしないであらわれた。寛政8年、組から小納戸に2人選ばれた。辰蔵が就いたのは西の丸――若君づきの小納戸。若君はつぎの将軍なのだ。

さらに手紙をせっせと送った(いまならeメールか)。しだいに味方がふえ、人望もあがってきた。それでもあせらなかった。我慢すること29年――健康にも恵まれていたから57歳で小納戸頭取(役高1000石)へ。

一代かぎりの今の俸給生活者と、家に収入がついていた幕臣とは異なるが、父親の逆を行った寡黙、書簡……の辰蔵の生き方は参考になるはず。

つぶやき:
感心するのは、平蔵宣以の妻・久栄(小説での名)である。舅・宣雄は、嫁してきて3年そこそこで歿している。それなのに、番方(武官)の格とはいえヒラつづきでしかなかった長谷川を、舅・宣雄が従五位下・なんとかの守に叙されるまでに引きあげたやりようをちゃんと見ている。
しかも、それを夫には強制していない。

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